施術料金をいくらに設定するか、治療院経営者なら必ず一度は悩む項目でしょう。
施術料金はマーケティングで非常に重要な項目で、これ次第で経営戦略・宣伝戦略も大きく変わってきます。
よくある事例として、戦略をしっかりと検討しないまま施術料金を値上げして集客が落ち込んでしまう治療院が多いです。
安定した治療院経営のためには、いくらぐらいの施術料金が良いのでしょうか?施術料金ごとの戦略はどうすれば良いのでしょうか?
今回は治療院の施術料金について深く掘り下げた記事となります。これから開業を考えている方や、いま施術料金の値上げを検討している方は、この記事を読んでから料金を決めることをおススメします。
治療院のプライシング
プライシングというのは、マーケティング用語で「サービスの価格を設定すること」を意味します。治療院にとっては施術料金の設定ですね。
一般的にはプライシングというのは、次の4つの方法で行われます。
コスト志向型価格設定法
コストに一定の利幅を加えることで価格を設定する方法です。
製造業や流通業など、仕入れが必要な業種で使われます。
需要志向型価格設定法
クライアントがサービスに対してどれくらいの価格なら受け入れてくれるかを検討することで価格を決める方法です。
サービス業などがこれに当てはまります。
競争志向型価格設定法
競合の提供するサービスの価格を意識して価格を決める方法です。
心理的価格設定法
消費者の心理に働きかける価格設定の決め方のこと。
例えば2000円ではなく1980円という料金にすることで、割安感を出すことなどはこれに当てはまります。
この4つの価格の決め方が一般的なのですが、治療院の場合は「需要志向型価格設定法」と「競争志向型価格設定法」を組みあわせて、総合的判断で施術料金を決めていきことになります。
需要志向型価格設定法
治療院が需要志向型価格設定法を使う場合、「いくらなら患者さんは来やすいのか」を想定することが必要になります。
保険治療だけの場合は患者さんは通いやすいでしょう。つまり新規のハードルが低いので集客もしやすいです。
一方で高額の自費施術のみなら、価格を受け入れてくれる患者さんの母数自体が少なくなります。つまり新規のハードルが高く、少数の新患でどう経営するかを検討しなければいけません。
競争志向型価格設定法
同じ地域にある競合院がいくらの施術料金で行っているかを調査して、同じ価格帯ならば「どうしたら自院を選んでもらえるか」を考える必要があります。
自院ならではの特徴を出せるか、価格に見合った結果を残せるか、患者さんの来院を後押しするほどの体験談はあるか etc
マーケティングのコンテンツから施術の内容にいたるまで、様々要素を総合的に考慮にいれなければ適切な施術料金を決めることは難しいでしょう。
値上げはリスク
施術料金を上げることは、リスクが高いということは知っておきましょう。
特に高額の自費料金に値上げをするなら、「新規のハードルが高くなること」「少人数の新患でどう経営を安定させるのか」を予め決めておかなければいけません。
「コンサルタントに値上げを勧められたから」というような理由で値上げすること失敗するケースが続出します。
そうではなく「なぜ今自院は値上げが必要なのか」「値上げしても納得してもらえる結果をだせるか」「マーケティング費用を増やすことが出来るか」などを検討してから、値上げをするかどうかを決めることが真の意味で「経営戦略」だと言えます。ここを注意しておきましょう。
治療院のプライシングについて前提を説明してきましたが、次からは施術価格帯ごとにメリット・デメリットを解説していきます。
保険治療
保険治療のみを行っている接骨院や鍼灸整骨院は、保険適用という大きな強みがあります。ただ一方で経営的なデメリットもあります。
保険治療のメリット
治療院にとって保険治療を行うメリットで最も大きいものは、「集客コストが低い」ということにあります。
極端なことを言ってしまえば、駅近くの人通りの多い場所に路面店として営業できれば、集客に苦労することなく経営が出来るのです。
場合によってはホームぺージがなくても集客できるでしょう。
路面店はそこにあるだけで宣伝になります。道を行きかう人がいやでも目にします。
何度も何度も目にすることで、自然と親しみを感じてもらえるようになります。これを「ザイオンス効果」と言います。
それに加えて、健康保険適用で治療を受けられるというハードルの低さもあります。
「痛みが出たらあそこの整骨院に行ってみようか」という選択肢を、人の頭に植え付けやすいのが保険治療の治療院のメリットです。
地域にもよりますが、保険治療でマーケティングをしっかりと行うならば、月に50人~100人の新患は見込めます。
保険治療のデメリット
一方保険治療のデメリットは「スタッフによるリピートの低さ」にあります。
1人治療院は保険治療のみで営業するのは合っていません。多くの新患をさばく必要があるので、スタッフを雇って行うことが前提となるでしょう。
経営者であるあなたはリピートにつなげるためのカウンセリング法や施術のコツなどに精通しているかもしれませんが、スタッフはまだ未熟なことが多く、リピート率がそれほど良くありません。
また保険治療だけだと、行える治療内容に制限があります。それだと慢性症状の根本改善は難しいので、途中で離脱をしてしまう患者さんもいるでしょう。
保険治療の治療院におススメな戦略
保険治療をメインに行う接骨院や鍼灸整骨院は、良い立地に路面店を構えてスタッフを雇って施術を任せます。
リピート対策のために、スタッフの技術・接客研修を定期的に行うことが必須だと言えるでしょう。
またあまり高くない自費施術を導入して、慢性症状の場合は自費に誘導していくことも重要になります。あまり高くしないのは、保険適用料金とのギャップが大きすぎると患者さんが離れてしまうからです。
理想は自費施術1回2000円から3000円くらいにしておくと、スムーズに自費を受けてもらえます。
スタッフ研修と自費施術への誘導をシステム化することが出来れば、保険治療の治療院は地域ナンバーワンの院となれるでしょう。
施術料金5000円前後
自費での集客で患者さんの質と数のバランスを最適化したいのであれば、施術料金を5000円前後に設定することをおススメします。
戦略が上手くハマれば、月30人の集客を実現することも可能でしょう。
メリット
この価格帯にするメリットは、先ほどお話したとおり「患者さんの質と数のバランスが最適化しやすい」ということがあります。
保険治療の場合は新患数が多くなりやすい一方、リピート率が良くないとお話しました。
この価格帯だと保険治療と比較して新患数が少なくなるものの、それなりにリピートしてくれる患者さんが増えます。
自費であることで、症状改善の本気度の高い患者さんが増えるからです。
またこの価格帯の治療院の場合、商圏に関してもバランスよくなります。
近隣からもそれなりに来ますし、遠距離からも通う人も出てくるでしょう。
メンテナンス患者を増やせるのであれば、治療院経営として最適な価格帯と言えます。
デメリット
施術料金5000円前後に設定することのデメリットは2つあります。
一つ目は、同じ価格帯の自費治療院の数が多く、マーケティングにそれなりに力を入れないとと埋もれてしまいやすいことです。
ホームページも作る、Googleマイビジネスに登録してMEO対策もする。ポータルサイトも活用する。出来ることは最大限行う日必要があります。
実は他の価格帯の治療院と比べて、最もマーケティングに費用と時間をかける必要があると言えると思います。
また2つ目の理由としてこの価格帯だと、スタッフ教育にもコストをかける必要があります。
技術力・問診力のあるスタッフに育てないと、せっかく来てもらった新患さんを任せることが出来ません。
新患は院長が見て、2回目以降はスタッフに任せるといういような体制は上手く行きにくいのが現実です。
スタッフが初回からずっと1人の患者さんを見ていける実力を身に付けてもらうために、院として研修を行うことが必須になると思います。
施術料金8000円以上
自費の施術料金が8000円以上は「高額」と言えます。高額な施術の治療院にしたいとお考えの治療家さんも多いことでしょう。
上手くいけば売り上げが高水準で安定しやりがいも感じることが出来る価格帯ではあるものの、デメリットも大きいことが特徴です。
高単価の治療院として開業したい、高単価に値上げしたいと考えているなら、ぜひこの先を読んでから検討することをお勧めします。
メリット
高単価の施術を導入することの最大のメリットは、治療院として売り上げの最大化を目指せるということです。
治療家は1日に見ることが出来る患者さんの数に限られています。
受け入れ患者数が限界に達した時に、売り上げをアップさせるなら単価を上げるしかありません。
また高単価の施術が出来るというのは基本的には院長の個人の力量によるもので、スタッフに任せて経営するものではありません。
つまり1人治療院に向いているのが高単価施術なのです。
人間関係の煩わさに縛られる自由に経営できるようになるのもメリットの1つだと言えるでしょう。
デメリット
高単価施術にするデメリットは2つあります。
一つ目は新患1人獲得する際のコストが高く、かつお金をかければかけるほど新患数が比例して増えるわけではないことです。
高単価の施術を選べる人は限られています。つまりパイとしてそもそも少ないのです。
なので近隣だけでは商圏としては狭すぎて、広い範囲で宣伝・集客を行うことが必須です。
広範囲の宣伝になるので当然宣伝費用を増やすことになり、かつ高単価であるハードルの高さゆえに成約率も低くなります。
高単価施術の場合は最大限上手くいって月に10名程度ぐらいだと考えておくのが良いでしょう。この月10人の新患で経営を安定させる体制構築が求められます。
また高単価施術は景気に悪化に左右されやすいのもデメリットの1つです。
景気が悪いと目に見えて宣伝集客の反応が下がりますし、それまで通っていた人も通院を停止したりします。
景気によって治療院経営が不安定になってしまうのです。
この2つのデメリットをクリアにする経営体制を作ることが出来そうであれば、高単価の施術を導入しても良いかもしれません。
まとめ
治療院のプライシング戦略について、3つの価格帯について解説をしてきました。
施術料金を決めることは、実はマーケティングとして最も影響力のある行為です。
各価格帯のメリット・デメリットを考慮して、そのデメリットをクリアできるかどうかを検討してから施術料金を決めることをおススメします。そうしない集客が不安定となり、経営が上手くいきません。
また今回は3つの価格帯について解説しましたが、「自費3000円」とか「自費6~7000円」でも別戦略が必要になってくることも多いです。
そもそも患者さん目線では、7000円でも高単価とみなされるようになりつつあります。
それぐらい価格戦略・プライシング戦略は敏感なもので、経営に影響します。
なあなあで施術を決めたり、コンサルタントの言葉に惑わされたりするのではなく、自分の院に合った施術料金は何かを必ず考えてみてください。今回の記事はその参考になることでしょう。
投稿者プロフィール
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治療院ひとつひとつの特性や地域性・業種ごとの推奨マーケティング理論を踏まえた集客コンサルティングを行うプロ。
有名クチコミサイト「エキテン」黎明期に在籍し、企画立案、有料サービスのプランニング、一般店舗のコンサルタントとして集客・マーケティング業務に従事。
当時のクライアント店舗は300を超え、その大半が治療院であったため、治療院の集客を熟知するようになる。特に新規客獲得に貢献した集客のエキスパートとして2012年に独立し「店舗集客集団WAO」を立ち上げる。
2021年には店舗集客集団WAOの治療院部門を独立させ、「治療院集客集団WAO」を設立。
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